Eccentric and explosive - the cinema of Sogo ISHII

ニッポン・レトロ 

石井聰亙監督(1957～)の日本映画界における意義は計り知れません。特に大きいのは、日本の映画産業におけるキャリア形成の型を破ったことでしょう。当時は映画製作を志すものは映画スタジオで一歩一歩キャリアを積んでいくことが普通でした。1978年に石井は澤田幸弘と共にある撮影所からたのまれて処女作を撮影しましたが（自分自身の短編映画『高校大パニック』のリメーク）、このとき石井はまだ大学生だったのです。しかし、賞も獲得した短編映画の鋭い表現手腕を買われ、その企画へ誘われたのでした。石井の単独映画デビューは『狂い咲きサンダーロード』（1980）です。もともとは日本大学藝術学部映画学科在籍時に卒業制作として発表したものでしたが、東映セントラルフィルムの配給で全国公開されました。新しい基準がここから始まりました。若く希望に満ちた多くの８ミリ映画製作者が、自分たちのやり方で上を目指すようになったのです。『狂い咲きサンダーロード』は同時に日本映画史の新しい時代の幕開けともなりました。石井のキャリアはよく２つの時代に大別されます。「パンク・イヤーズ」と「サイケデリック・イヤーズ」です。今の視点から見ると、「修行・イヤーズ」とでも呼べるようなもう一つの時代を付け加えることもできるかもしれません。 石井はまた、『五条霊戦記 GOJOE』と『ELECTRIC DRAGON 80000V』の対をなす2作品を皮切りに、ここ10年でジャンル、ムード、ありとあらゆる実験に取り組んできました。石井は最近アーティスト名を「岳龍」に改名しましたが、これは丸40年というキャリアを持つ日本映画界の重鎮が、またしても新たな製作段階へ移行したという印なのかもしれません。(Tom Mes)

監督作品（短編、長編）

高校大パニック (1976年)、1/880000の孤独 (1977年) 、突撃！博多愚連隊 (1978年) 、狂い咲きサンダーロード (1980年) 、シャッフル (1981年)、爆裂都市 (1982年)、アジアの逆襲 (1983年)、逆噴射家族 (1984年) 、半分人間 (1985年) 、 指圧王者 / Dumb Numb Live Friction (1989年)、TOKYO BLOOD (1993年)、エンジェル・ダスト(1994年)、水の中の八月 (1995年) 、ユメノ銀河 (1997年)、五条霊戦記 GOJOE (2000年)、ELECTRIC DRAGON 80000V (2001年) 、DEAD END RUN (2003年、NC '04) 、鏡心 (2005年)、生きてるものはいないのか (2012年)